「空腹状態になると筋肉が分解される」

こんにちは!柔整師の奥永です。

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「空腹状態になると筋肉が分解される」

一般的には、こう考えられていますよね?

ですが、最近のメタアナリシス(科学的根拠としての質が最も高い研究)にもある通り、

身体は短時間の空腹状態で筋分解が進むことはなく、

個人差はあるが、6~16時間程度の空腹状態が続いても筋分解は起こりえないという事が分かって、

実はそう簡単に筋肉は分解されるようなものではありません。

私も空腹状態は筋肉が直ぐに分解すると信じていたため、衝撃の事実でした。


フィットネス業界では一般常識とされている空腹で筋肉が分解される理由はこんな感じです。

空腹でエネルギーが足りなくなり、身体を動かすためにはエネルギーが必要になるので、

筋肉を分解してエネルギーに変えを補うため、空腹状態は筋肉が分解されてしまう。

これが一般的にいわれている空腹で筋肉が分解されるメカニズムです。

これは半分合っていて半分間違っているという事が分かりました。

実は空腹になったからといって、思っているほど直ぐには筋肉の分解が始まることはありません。

個人差はあり、前提条件によっても変わりますが、空腹状態になってから筋分解が始まるまでに6~16時間程度かかります。

少なくとも通常の状況下では数時間や数十分で筋分解は始まらないという事です。



[筋分解の生理学的なメカニズム]

大前提として、人の主なエネルギー源は糖質(グルコース)です。

糖質を摂取する最も簡単な方法は、食事で炭水化物を摂ることですが、

体内では別の物質から糖を作り出すこともできます。

まず肝臓や筋肉には糖をグリコーゲンという形で貯蔵しています。

通常エネルギーが必要になると、このグリコーゲンを分解して身体のエネルギーとして使用します。

また体脂肪にはグリセロールという物質が含まれており、これも糖に変換してエネルギーに使う事ができます。

そして筋肉に含まれるアミノ酸ですが、これも糖に変換することができます。

しかしここで多くの人がアミノ酸が糖に変換される過程で誤解していることがあります。

その誤解とは、まず筋肉をアミノ酸まで分解し、このアミノ酸を糖に変換する過程の事を「糖新生」と呼びます。

しかし、この糖新生による筋肉の分解は

’’肝臓に蓄えている糖が枯渇するまでは起こらない’’事が分かっています。

つまり、身体は通常筋肉を分解することなく、むしろ維持することを望んでおり、

通常の状況下では、肝臓に蓄えられている糖が枯渇するまで、身体は筋肉を分解することは無いという事です。

したがって、「空腹状態になった途端に筋分解が始まる」というわけではありません。

空腹状態が続き、肝臓に蓄えられた糖が枯渇してから、やっと筋分解が始まるという事です。


この通り空腹になってから筋分解が始まるまでには時間的な余裕があります。

ではどのくらい時間的な余裕があるのか?

人の肝臓に蓄えられている80~100gの糖が枯渇し、

糖新生が始まるまでにかかる時間は先に述べたように6~16時間程度だといわれています。

様々な研究で、

①6時間の空腹状態 ②12~16時間の空腹状態

③トレーニング経験者が1日のうち16時間食事を摂らない

この生活を8週間を続けても、

筋量を維持することが出来たことが報告されています。

このように糖新生が始まるまでの時間に幅はあるものの、短時間の空腹状態で筋分解が進むことは無く、

6~16時間程度は筋分解が始まるまでの時間的な余裕があるという事です。

焦る必要も無く、合間で食べる物や日常で飲むEAAやBCAAの消費量が減るので出費も減らせます。



[空腹状態でのトレーニングで身体はどう反応するのか?]

空腹状態で運動するメリット

まず脂肪の分解速度が加速します。

ある研究では、身体が栄養に満たされている状態で運動するときよりも、

空腹状態で運動した方がより多くの体脂肪を燃焼出来るという事です。

また別の研究では、空腹状態になるとお腹への血液量が増加することが分かっています。

実はお腹の脂肪がなかなか落ちない理由の一つは、お腹への血液が乏しいことなんです。

つまり空腹状態で運動することは主に体脂肪の分解を促進し、

特にお腹周りの体脂肪を落とすのに有効という事です。

これが空腹時に運動するメリットであり、これを利用した減量テクニックとして、

朝起きて空腹状態で有酸素運動を行うという事もあります。


空腹状態でトレーニングをするデメリット

筋肉の分解率を高めてしまうことです。

空腹状態でトレーニングすると、肝臓に蓄えられた糖の利用速度が加速し、

6~16時間も経たないうちに筋分解が急速に進んでしまう可能性があります。

ただ、肝臓に蓄えられた糖が枯渇した後、筋分解が始まります。

肝臓には平均して100gの糖質、つまり400㎉分のエネルギーを貯蔵することが出来るので、

直ぐに枯渇することは通常の状況下では起こりません。

400㎉分のエネルギーを筋トレで消費するとなると、

体重50㎏の人の場合、肝臓の糖を枯渇させるまでには、

高強度のウエイトトレーニングで約75分かかる計算になります。

さらに実際には糖質は肝臓だけではなく筋肉にも存在するので、

実際にはもっと多くの運動時間が必要になります。

このように、空腹状態でトレーニングしたからといって、筋分解が起こりやすくなることは事実ですが、

即筋分解されるわけではありません。

ただ空腹時のトレーニングで筋分解が即行われる場合もあります。

それは日常的にほとんど糖を摂らない、もしくは摂れない方です。

日常的に基礎代謝を下回る極度な低カロリーで過ごし、

体内に貯蔵されている糖質が運動前から既に枯渇している可能性があります。

運動前から枯渇している状態であれば、空腹状態のトレーニングで即筋分解される恐れがあります。


もう一つデメリットは筋肥大効果の最大化を狙えないことです。

ある研究によると、空腹状態のトレーニングでも運動後に十分な食事を摂れば筋肥大されることは可能だとわかっています。

しかし、十分に栄養で満たした食事よりも優れているわけではありません。



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